愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 それが願える状況ならば。

 私が今回の成果に満足して拍手でもしようかと思った、その時だった。


「そんなこと、許されません」
「え」
「俺は王太子妃殿下を守ったどころか、一度は剣を向けました」

“この真面目馬鹿!”

 これでハッピーエンド、そう思ったのにまさかの反論に頭を抱えたくなる。
 この頑固な男をどう説得すべきか頭を悩ませていると、突然アルドが私の頭をくしゃりと撫でた。

「いや、クリストフは間違いなく守ったよ」
「事実は違います! この国に属する騎士として優先すべきは王太子妃かもしれませんが、俺が常に最優先するのはモニーク王女ただ一人だ!」
「では公表するか? そのモニカを拐ったのがセヴィーナだと」

 静かにそう聞かれたクリストフ卿が息を呑む。
 
 きっと彼にもわかったのだろう。
 もしこの件が公表されれば、いらぬ憶測を呼び実質はただの人質として来た私の命が消えるということを。

「未来の国母だとしても、実際の私は人質よ。クリストフ卿が事実を口にすれば処刑されるのは私だわ」
「で、公表するか?」
「――ッ、公表は、しま……せん」
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