愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「クリス、疲れてない? 休憩がてら一緒にお茶をどうかしら」
「職務中ですので」
「そう? 疲れたり喉が渇いたらいつでも言ってね」

 少し残念そうにクリストフ卿を見上げる王女、そしてそんな王女にだけ見せるふわりと綻ぶような笑顔を向けるクリストフ卿。

“お似合いね”

 今ではどうして最初に嫌っているのだと勘違いしたのか不思議なくらい相思相愛の二人に私の頬も緩んでしまう。

 あの事件の後に変わったこと。
 クリストフ卿が王女の私室へと入るようになったこと、だ。
 あの堅物な彼が、である。

 まだ正式な婚約発表こそされていないが、その行動の変化で既に二人の仲について知らない者は王城にはいない。

 ――まぁ、最初から王女の片想いは有名だったのだが。


「でも、良かったわ」
「何がかしら」
「王女が変な意地を張ってクリストフ卿を振ってしまうんじゃないかと思ったもの」
「な……!」

 あんなに『好き』が駄々漏れだったにも関わらず、彼女は国の為の結婚をするべきだと考えていた。
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