愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 それは王族に生まれた義務であり、彼女の存在意義でもあったのでその考え自体は不思議ではなかったが、それでも今、好きな人を選ぶことが許され、またその好きな人から想いを告げられたにも関わらずその人を選ばないなんてことはして欲しくなかったのだ。

“だから、王女がクリストフ卿の手を取ってくれて本当に良かったわ”

 にこりと笑った私と目があった彼女は、じわりと頬を染めながらフンッと思い切り顔を逸らす。

「仕方がなかったんですわよ! 実際はどこかの誰かが起こした迷惑行為の代償だったけど、一応は褒賞を与えられることになったのだもの」
「そうね」
「でも騎士爵は名誉ではあるけれどだからと言って何かが変わるわけじゃないわ。だからその、私が降嫁するくらいじゃないと釣り合いが取れなかったのよ!」

 どっかの誰かのせいなんだから、なんてプンプンと言いながらも、ボソリと「それにあれだけ真っ直ぐ私を選ぶなんて言われたら」と呟いた彼女が微笑ましい。

“可愛いわ”

 そんな素直じゃないようで素直な彼女に私は思わずきゅんとしてしまった。


 
 変わったのは、それだけではない。
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