愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 そう、私は侍女長からも冷遇されていた訳ではなかったのである。
 

 確かになんだかんだでいつも側にいてくれたミィナは、どれだけ私に付き合わされ他の仕事をする時間が無くなったとしても誰かに怒られたような様子はなかった。

 だがそれは、侍女長から与えられた仕事が『私の世話をする』だったと考えれば辻褄が合う。
 そして彼女が王女に異様に怯えた理由も、王女の命令に背いている自覚があったから。

 それも、親子で。
 
 むしろ何故そのことに今まで気付かなかったのかとも思うが、今は丸く収まったので良しとしよう。

“それに、ミィナが正式に専属侍女になってくれたのも嬉しいわ”

 そうなのだ。
 実質ほぼ専属侍女だった彼女だが、この度の一件が収まったことで私の専属侍女になってくれたのだ。

 こんなに危なっかしい火種は嫌だと侍女長に泣きついた――なんていう噂を聞いた気がしなくもないが、彼女が専属侍女になってくれたのは私としては嬉しい限りである。


「あら、やけにご機嫌ですこと」
「ふふ、嬉しいなって思っていただけよ」
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