愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 その素直になりたいのになりきれない不器用さが堪らなく可愛くて、私はぽやんとしてしまう。

 どれくらいぽやぽやとしてしまったかと言うと――

「すぐにお父様へ、お兄様がお義姉様を個人の性癖で辱しめようとしていると手紙を書いて届けさせますから!」

 ――というモニカを、にこにこと手を振って見送ってしまうくらいには。


「……って、え、モニカのお父様!? って、公務で今王妃様と一緒に別の国に行かれている陛下ってことよね!? というか辱しめ……!?」

 ハッとした時にはもう彼女は私室を出ていってしまった後で、私は慌てて追いかけようと扉を開ける。

「うわ、セヴィーナ。ここにいたのか?」
「あ、アルド!?」
「モニカはいるか? 二人の婚約証書が出来たからサインを貰いに来たんだが……」

 妹の為に尽力し、私の作戦をちゃんと理想通りの結末へと導いてくれた夫。

 それなのに、どこでいつ拗れたのか、何故か彼の性癖で夜の行為を皆にお披露目するとあんなに可愛がっている妹に勘違いされてしまった不憫な夫。

 そんな彼がにこりと微笑むその姿に、私の心は罪悪感で致命傷だ。
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