愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 私が人質として単身敵国へと向かうことを心から心配し嘆いてくれているのはジークだけなのだから。


 リヒテンベルンには男児がいない。
 今度こそ、と期待された三番目である私もまた女児だったからだ。

 可愛がられた二人の姉とは違い、流石に三人目はがっかりとされたのだろう。
 明らかに姉たちとは違う待遇だったが、それでも子は親の愛を求めるもの。

 姉の真似をして着飾ってもダメならば、求められていた男児に近くなるべく体術を学び剣術を磨いた。
 いつか私のことも見てくれるのだと信じて――


“試そうなんてした罰だわ”

『お前たちをそんな危険な目にあわせる訳にはいかない』と嘆く両親と、『恐ろしい』と涙を流す姉たち。

 
 もしかしたら、私のことも心配し引き留めてくれるのではないかと思ったのだ。
 お前を行かせるなんてしない、と言ってくれるかもしれないとそう期待した。

 
“まさか『そうか、行ってくれるか』だったなんてね”

 ハッと思わず鼻で笑ってしまったが、淑女らしくないと顔をしかめる相手ももういないから構わない。


「逃げませんか、セヴィーナ姫様」
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