愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
第四章:たった一人の護衛騎士

25.失言は取り繕って然るべし

「セヴィーナに護衛騎士をつけようと思っているんだが」
「護衛騎士?」

 アルドのベッドに寝転がりながらノルマとして渡された『やさしい初めてのマナー本』という本をパラパラと捲っていると、執務を終えてベッドまでやってきたアルドにそんなことを言われてきょとんとした。

“でも、護衛騎士って”

「アルドにも護衛騎士はいないわよね? というか、モニカ以外護衛騎士をつけてる人って見たことないのだけれど」

 リヒテンベルンでは王族には皆専属の護衛騎士が何人かついていたが、ここグランジュでは専属護衛騎士という仕事をしている人を見たことがない。

“だからそういうものなんだと思っていたんだけど”

「王宮第一騎士団が近くにいるからあえて誰かを城内で連れ歩く必要がない。それに王城内には第二、第三騎士団もそれぞれ場所を変えて駐在しているし、どこかへ出る時は必ず騎士団員が護衛につくから問題はない、が……」
「が?」

 少し勿体ぶったようなアルドの様子に、思わずごくりと息を呑む。

「……先日、その完璧な警護を越えて賊が出た」
「な、なんですって!?」
「しかも王女を拐った」
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