愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 大人しく聞いていた私は彼のその言い分にムスッとするが、だがあの時のことがどれほど危険で、そして彼に沢山の心配をかけたこともわかっていたのでここは受け入れるしかないだろう。

“まぁ、それにいつでも手合わせが出来ると思えば悪くないかも”

「本当はジークくらい強い人がいいけど……そんな人は滅多にいないし。最低限私より強い人にしてね?」

 護衛が護衛対象より弱いということはあり得ないので、私の希望は当然なのだが、何故かパチパチと目を瞬かせるアルド。

「? 私、可笑しなことを言ったかしら?」
「え? あ、いや……その、ジーク、とは?」
「へ?」

 そして彼の言葉に今度は私も思わず目を瞬かせる。

「言ったことなかったかしら? リヒテンベルンにいた頃の私の護衛騎士よ」
「祖国の、か」
「輿入れの時も唯一私をグランジュまで送ってくれたし、それに一番側にいていつも守ってくれたわ」
「そう、なのか」
「私はほら、気付いてるとは思うんだけどリヒテンベルンでは浮いていたから」

“本当は無視され冷遇されてたんだけど”

 きっとアルドはその事に怒ってくれるだろう。
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