愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 そしてそれと同時に悲しんでもくれる、そんな気がした私はハッキリ言葉にすることを避けた。

 アルドを悲しませたくないと思ったから。

“彼は本当に変わったけど、同じくらい私も変わったわね”

 そんなことを内心思い、くすりと笑みが溢れる。

「……そんな顔をして笑うくらい、特別な人だったのか? そのジークとやらは」
「へ? うーん、まぁ私に剣と、あと生きる意思を教えてくれたって意味では特別かも? それにジークは私が直接選んだ唯一の人だからね」
「唯一自分から選んだ、か」

 声が小さくてあまり聞こえなかったが、ぽつりと何かを呟いたアルドに思わず首を傾げる。

「ちょっと、なんだか表情が暗くないかしら」
「そんなことは……」
「絶対顔色悪いわよ! こんな時間に仕事ばっかりしてるからじゃない!?」

 なんだかいつもとは違う様子の彼に心配になり、慌ててベッドから降りて彼の側に駆け寄った私は、そのまま彼の手を引き無理やりベッドへと連れ込んだ。

「ほら、頭撫でていてあげるからさっさと寝なさいよ」

 むぎゅっと彼の頭を胸に抱き込むようにし、そっと撫でる。
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