愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 どんなドレスにも対応出来るようにと長めになっているのがポイントで、ひらひらの夜着で逆立ちすると胸が丸出しになってしまうため、それを防ぐために結んだのだ。

「この革紐はその、夜着が脱げないようにと思って」
「普通は夜着で逆立ちとかしないんですよ!」
「そうね、着替えてからトレーニングするべきだったわ」
「そういうことを言ってるんじゃ……!」

 一瞬私に言い返そうとしたミィナは、言っても無駄だと思ったのか呆れた顔をして大きなため息を吐く。
 そしてサイドテーブルに銀タライを置いた。

「い、一応もしアルド殿下が来られたら拘束するにも使えるなって思って」
「王太子殿下を拘束しないでいただきたいのですが」
「いやほら、逃がさないためにね?」

“ダメ! 何を言ってもミィナの顔からどんどん表情が消えてしまう!”
 
 現状嫌々ではありそうだが私のところに来てくれる唯一のメイドが彼女である。
 そんな彼女から軽蔑されることはなんとしても避けたい。

 あわよくば彼女ともっと親しくなり、せめて話し相手になって欲しいと思った私は、帰ろうとして背を向けたミィナを無理やり引き留めた。
 
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