愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 そしてしみじみと重ねられた言葉に思わず吹き出す。

“ベルモント卿はあの事件の真相は聞かされてないはずだから、本来付かないはずの護衛騎士をつけるとなるとそう見えるのかしら”

 もちろん、王太子の住む区画に隣接している王子妃宮は第一騎士団が近くにありその警備を担っている。
 にも関わらず賊の浸入を許したが、それに対して何一つ処罰されなかったこととその事件がキッカケでモニカの護衛騎士であるクリストフ卿に騎士爵が与えられ婚約間近だということからあらかたを察してはいるだろう。

 そこまで考えてハッとする。

“……私、もしかして”

「第一騎士団に物凄く迷惑をかけてます、ね?」

 私がそうおずおずと確認すると、少しきょとんとしたベルモント卿が眉尻を下げて小さく笑った。

「訓練にご参加されることがですか?」
「そ、そうじゃなくって……!」
「大丈夫ですよ。殿下が挽回の機会をくださったんですから」

“やっぱり!”

 私が行った作戦はクリストフ卿の功績を作るものだった。
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