愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 だが、そこを強調することばかりに固執した結果、第一騎士団に『賊の浸入を許した』というレッテルを貼ってしまったことに気が付く。

“私は何も見えていないのね……”

「失態を犯した我々から専属の護衛を選んでくださるんです。それだけで殿下からの信頼は証明され、また完璧にお守りすれば自ずと外部からの評価も上がるでしょう。まぁ、王城内の皆は大体は察しておりますが」

 俯いてしまった私を励ますためか、いつもより少し明るめの声でそう言ったベルモント卿に私もぎこちなく笑顔を作る。

 確かに賊がモニカを拐ったが全員無傷で帰還し、その結果クリストフ卿に爵位が与えられ、城内では知らない者がいなかったとまで言われるほどの片想いをしていた二人の婚約話がまとまりそうなのだ。

 賊の侵入という茶番を本気で信じる者はおらず、第一騎士団に陰口を叩くような者はいない。
 だがそれは王城内での事実。

“外部、……王城外からは……”

 そんな片想い事情を知る由もない、例えば平民たちから見れば騎士のエリートである彼らの失態は拭えない事実なのだと理解した。
< 211 / 340 >

この作品をシェア

pagetop