愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「お嬢様に関してはもう止めるだけ体力の無駄だと覚えました。それとも今すぐ王太子殿下のところまで走って告げ口しに行きましょうか」
「さぁ出発よ、馬車を出してちょうだい」

 ジロリと恨みがましい表情でそんなことを言われた私は慌てて御者にそう指示しながら彼女の乗る馬車へと飛び込んだ。

「……でも普通は主人より後に乗るものじゃない?」
「その方がよければ次回からそういたします。まぁ乗るフリをして私が王太子殿下の――」
「誰が選ばれるかが楽しみね!」

 ミィナの言葉を遮るように話しつつ、つい小さな笑いが私から溢れる。

 相変わらず相手が相手なら不敬罪で処罰されてもおかしくないミィナの態度だが、本当は私のことが心配だけど素直に一緒に行くと言えない彼女なりの同行の言い訳なのだろう。

“いつ気付いたかは正確にはわからないけど”

 それでも『そうだ』と確信が持てるくらい彼女の表情を読むのが上手くなったことがなんだか嬉しい。
 なぜならそれだけ彼女と一緒にいたということだから。

 リヒテンベルンにいた頃は、家族が私を疎ましく思っていたせいで王城のメイドたちにも下に見られていた。
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