愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 
 それにもしこの状況に乗じて私に何かがあれば、名誉挽回のための護衛騎士の選出が逆に失墜の場になってしまう。
 しかもこの大会は誰でも飛び入り参加可能な大会なのだ。

“実際に私が以前やった選抜大会でもその方法を取っていたし、何より第一騎士団員同士が戦ってばかりだと強さの基準がわからなくて説得力に欠けるもの”
 
 強さの指標になる腕自慢の平民が一人でも参加してくれれば、とは思っていたが、だからこそ私が私として誰かに傷つけられれば問題になる。

 私を傷付けたのが平民だったなら尚更だ。

“絶対に怪我だけは出来ないわね”

 私は内心でそう思ったのだった。
 
 
「あとは飛び入り参加者がいてくれればいいんだけど」

 思わずそう不安気に呟いた私の目に映ったのは、想像以上に多い参加者だった。

「こ、こんなに?」

 ぱっと見で二十人はいるであろう平民からの参加者に唖然とする。

「王太子殿下の溺愛の噂のお陰ですかね」
「な、なるほど……?」

 一人いるかも怪しいと思っていただけに、この知らせは嬉しい誤算というやつだ。
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