愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 もちろん全員が私に好意的な理由で参加してくれているわけではないとは思うが、彼らの纏う雰囲気がギスギスしたものではなく希望と期待に満ちたものであったことも私としては嬉しいポイントだった。

「でも、流石にこんなにいると一人くらいはとんでもない化け物とかがいそうね……」

“例えばジークみたいな”

 私の唯一の味方だったたったひとりの護衛騎士。今頃祖国でどうしているのだろうかと少し寂しく思った私は視界の端でやたらと大きな人影が動いたことに気付く。
 何故かどうしても気になり確かめようと思わず足を一歩踏み出したその時、まるで現実に引き戻すようにベルモント卿が口を開いた。

「例えどんな化け物がいても我が第一騎士団が負けることはありません。いただいたこの信頼を無駄にするような鍛え方はしておりませんから」
「え? あ、えぇ。もちろんそうだわ」

 私を安心させるようにそう力強く断言したベルモント卿に同意しながら目線だけで人影があった方を確認する。

 けれどそこに人影はもうなかった。
 まるで初めから誰もいなかったように――……
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