愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 くじだから公平のはずだし、それに冷静で高潔、真面目を絵に描いたようなベルモント卿がしっかり監視している中で順番に引いたのだから偶然……のはずなのだが、たまたまこんな偶然が起きるものなのかと首を傾げる。

「まさかベルモント卿、仕込んだりとか……」
「さぁ、どうでしょうね」

 思わず小声で聞いた私は、しれっと返ってきたその言葉に唖然とした。

“ま、まさか本当にベルモント卿が不正を!?”

 そんな心の声を察したのか、口元だけでベルモント卿が苦笑する。

「妃殿下の安全の為には仕方がなかったんですよ。どういった思惑で参加したのか本心まではわかりませんから」
「確かにその通りではあるけれど……でも、ベルモント卿が自らそんなことをするとは思いませんでした」

 何故なら彼は誰よりも公平で、正統派の騎士のように見えていたから。

 だが、意外にも彼の口から出たのは「結末が求めていたものであればどんな過程も正義ですから」という、彼らしくない言葉だった。

“まるでジークみたいなことを言うじゃない”

 例えどんな卑怯な方法でも、生き残ればそれが正義でそれが勝利。
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