愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 そしていつの間にかこうやって寝る前に談笑することも私たちの当たり前になっており、その事実が少しくすぐったい。


「それにしても、セヴィーナは何を見つけて走り出したんだ?」

 不思議そうな顔をするアルド。

“そっか、ベルモント卿は見てないのね”

「ジークがいたのよ」
「……は?」
「だから、ジークがいたの」
「ジークって、セヴィーナのリヒテンベルンでの護衛騎士か?」

 さっきまで仰向けに寝転がっていたアルドが体を起こし向かい合うように座る。
 さっきまでの笑顔とは違い、少し表情が強張っていることに気付いて戸惑うものの、理由が全くわからず私は首を傾げた。

「えぇ。そのジークよ。私にとってたった一人特別で大切で、師であり唯一の家族だわ」
「……好きだったのか?」
「そんなの当たり前じゃない」

“あ、でも今はアルドも、それにモニカだっているから『唯一の』ではもうないわね”
 
 アルドの質問に答えながらそう思い直し、訂正しようと私が再び口を開いた時だった。


「唯一の特別な存在で、お前の好きな人、か」
「え、アル……んっ!?」


 一瞬何が起こったのかわからなかった。
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