愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「だから無理して抱かれてなんかないってば!」
「じゃあなんだ?」

“な、なんだですって!?”

 アルドのその言い方に段々と苛立ち、混乱してぐちゃぐちゃだった私はその勢いのまま思考を捨てる。

「嫌じゃないって言ってるのよ!」
「つまり抱かれたいってことか?」
「そうよ!! …………、っ?」

 ――まさに、売り言葉に買い言葉。


 あ、と思った時にはもう遅く、ニヤッと口角を上げたアルドが再びベッドに腰かける。

「抱かれたいのか。なら仕方ないな、セヴィーナから言い出したんだから自分で出来るよな?」
「えっ、じ、自分で?」
「やっぱり嘘だったのか、なら俺は別の部屋に……」
「やるわよ! やればいいんでしょ!?」

“な、なんなのよこれぇっ!”

 もう本当に訳がわからない。
 何一つわからない。

 どうして彼が怒っていたのかも、何故こんな流れになったのかも。

 腰かけたまま私をじっと見るだけの彼を見て察したことは、どうやらアルドは『何もしない』つもりだと言うことだけだった。

「……っ、も、もう!」

 半ばやけくそのような気分になりつつ、先程直したばかりの夜着をバサリと脱ぐ。
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