愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「いえ、そんなことを心配しているんじゃ……あーもう、わかりましたよ。とりあえず朝食をお持ちしますのでその後です」
「やったわ! 嬉しい!」

 思わずガバリとミィナに抱き付くと、唖然とした顔を向けられる。

「……王女であり王太子妃という自覚はありますか?」
「貴女ももう私の友人に片足突っ込んでいる自覚はある?」
「そんなものありませんよ!」

 ぎぇっと謎の鳴き声を発したミィナが私を剥がし、真っ赤な顔で部屋を出る。

“怒って真っ赤になったのかしら、満更じゃなくて赤くなってくれたのなら嬉しいのだけれど”

 そんなミィナを見送った私はバサリと夜着を脱ぎ、トランクから訓練着を出していそいそと着こんだ。
 
 一応敷地内とはいえ外へ出るのだ。少し迷いつつも訓練着の上からクローゼットに用意してあったドレスを重ねる。

 
「このドレスもアルド殿下が選んで用意してくれたのかしら」

 部屋の家具やリヒテンベルンに似た風景画同様、このドレスたちもアルド殿下が選んでくれたのだとしたら――

“あの整ってるけど不服そうな仏頂面で選んだのなら少し面白いかも”
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