愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「それ以外は正直ないのよねぇ。特に誰とも、そうね、ベルモント卿に失格を言い渡されたくらいしか異性との絡みは無かったもの」

“対戦相手の騎士とは剣すら交えなかったのよ?”

 やはりどう考えてもヤキモチの心当たりはない。
 
「やっぱりヤキモチじゃないんじゃないかしら」
「それを断言されるのは、少し殿下が可哀相な気もしますが」

 私があまりにもあっさりそう結論付けたからか、ベルモント卿が苦笑を漏らす。

 
“ヤキモチじゃないなら”

 アルドが不機嫌になった理由が男としてではなく王太子として、だったのならば。

 それならば心当たりがひとつある。

“ジーク……!”
 
 ジークがリヒテンベルンにいた頃の護衛騎士だということはアルドに伝えているし、私の師であることも言っている。

“あの時、どうしてジークは去ったのかしら”

 声もかけずに、その場を去る理由は何なのか。

 実質私は人質であり、リヒテンベルンはグランジュから見たらコバエのようなものだとしても、表向きは友好国であり王太子妃。
 その私の騎士だったジークが顔を隠し、こそこそと動く、その理由。

「スパイ行為……?」
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