愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 ジークは理不尽な命令を聞くタイプでもなく、またお金を積まれても納得出来ない仕事はしない。

 だが後ろ暗い仕事を受けていないのなら、何故こそこそと隠れる必要があるのだろうか?

 その一点がまるで小さなシミのようにじわりと心を侵食し不安にさせる。

 思わず俯いてしまった私に気付いたのか、ベルモント卿が私を励ますように笑顔を作り顔を覗き込んできた。
 

「私もあいつはスパイ行為なんてしないと思います。ただ、あいつは顔が知れ渡ってるから、顔を晒すことが出来ない状況に陥っているのかと」
「そう、よね」
「私が探します、誰かに見つかる前にこちらで見つけて保護しましょう」
「ベルモント卿……!」

 彼がハッキリと口にした『保護』という言葉に安堵のため息が漏れる。

 何故ならそれは、本当にジークを信じてくれているからこそ出る単語だからだ。

“味方がいるって心強いわ”


 ――もしここにアルドもいてくれたなら。

 同じように相談したら、アルドも同じように信じてくれただろうか。

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