愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 流石にそこまではしてくれないか、なんて思いつつ頬が緩む。
 クスリと笑いが溢れた丁度その時、フルーツ多めの朝食を持ってミィナが戻って来てくれた。


「お待たせいたしまし――えっ」

 そして愕然とした顔になった……のは、すでに私が着替えを終えていたからだろう。

「さっさと食べて訓練所に行かなきゃね!」
「え? あ、はい」

 本日三度目の戸惑いを滲ませたミィナだったが、やはり彼女も若いとはいえ王宮メイドのひとり。
 すぐにハッとしテーブルに朝食を並べてくれる。ぱっと見で三人分はありそうだが、これが噂に聞く『好きなものだけを選んで少しずつ食べる贅沢』という祖国で姉たちがよくやっていたやつだろう。

 だが私の今日の理想のスケジュールには騎士たちとの訓練もあるのだ。
 
“少しでも多くお腹に入れておきたいわ”

 私はミィナが準備してくれた朝食をどんどん口に放り込む。

「え、全部召し上がるんですか?」
「そうよ、沢山食べておかないとスタミナが切れてしまうかもしれないからね」
「そういうもの……ですか……?」
「そういうものよ」
 
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