愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「ま、まさかセヴィーナみたいな元気な女がタイプだったのか?」
「元気というよりじゃじゃ馬、じゃじゃ馬というより暴走馬車ですけどね」
「お、おい、まだ予選も終わっていないのに二人で消えたぞ!? まさか駆け落ちしようとしているんじゃ……!」
「夫婦って似てくるもんなんですねぇ」

 どこか呑気な声を出すダレアに構っている暇はない。
 自身の妻が男と二人で建物の影へと消えたのだから。

「追わないと……!」
「どうしてです?」
「……は?」

 焦った俺が走り出そうとすると、あっけらかんとダレアがそう口にして唖然とした。

「どうしてって、そんなの……」
「愛人でも恋人でも好きに作って構わない、じゃなかったですか?」
「!」

 紛れもなく自分の口で告げた言葉を言われ、思わず口ごもってしまう。

“確かに俺は最初にそう言ったな”

「妃殿下との約束通り、妃殿下と恋をしてはどうかとも進言しましたよ」

 さらりと重ねられたその言葉は、何故かベルモント卿の元でセヴィーナと新人騎士が模擬戦をしていたのを見た時に提案されたことだった。

“あの時は、お互いに好きになれるか次第だなんて思っていたな”
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