愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 そして正直、自分が彼女に惹かれるだなんて思わなかった。
 だが実際は――

「好き、なんだろうか?」
「見ていればわかりますよ」
「どこが好ましいのか思い当たらないんだがな」
「それを全部好き、と言うのでは?」

 全部と言われて苦笑してしまう。
 

 大国グランジュの王太子として、常に冷徹でいることを心掛けていた。

 規律を守り、節度を守り、模範的な王太子として、ある意味型にはまった人生だった。

“いつかは政略結婚をすると思っていた。それが人質にするためのものだとは思わなかったが”

 だからこそ人質という役目を終えたなら、誰とでも幸せになればいいと思っていた。
 俺自身も彼女と離縁し、独身に戻ればまた国に有益な相手との政略結婚の駒になれるはずだったのに。

「セヴィーナは、俺とは正反対なんだ。だから口論が絶えない」
「口論出来る対等な相手でいてくださっているんですね」
「破天荒で、予想外の行動をする。その行動をしたらどうなるかをあらかじめ考えるのではなく、行動した後に考えるタイプだな」
「だからこそ新しい答えに辿り着きますね」
「真っ直ぐ、俺だけを見てくるんだ」
< 251 / 340 >

この作品をシェア

pagetop