愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「仕方なく迂回することにしたんですが、予想以上に遠回りしなくてはならなくて。ただ、この雨と地面のぬかるみを考えればリヒテンベルン側も何も出来ないだろうと思い焦りはありませんでしたね」
「ある意味休戦状態だったのね」
「えぇ。そしてそんな時に、突然目の前に現れたのがジークだったんです」

 ジークは元々流れの傭兵だったので、土地勘などはない場所が多い。
 そんな中、豪雨で地形が変わったとなれば道に迷ってしまっても決して不思議ではなかった。

“きっと依頼先へ行こうとして雨に降られたんだわ”

 私のその予想は当たっていたようで、そのままベルモント卿が話を続ける。
 
「目的地が近いようで、案内がてら同行を頼まれ許可しました。途中足止めされた時間もあったので、ジークとは案外長い時間一緒にいて、体が鈍らないようにと何度も剣を交えましたね」

 騎士団で教わり、そして教えていた戦法はジークにまるで通じなかった、と笑うベルモント卿。
 
 きっと彼が一番ジークと剣を交えたのか、話をする彼の表情から、まるで幼い頃から友人同士だったかのような親しみを感じさせた。
< 255 / 340 >

この作品をシェア

pagetop