愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「あいつ、何でもするんですよ、本気じゃないなんて言いながら足を引っかけ木から飛び降り土をぶつけて……、お綺麗な戦法とは決して言えない。まさに妃殿下のような戦い方でした」
「遠回しに私への文句ね?」
「それが、面白いと思いました。そして本当に強かった。私は結局一度も勝てなかったんです」

“ベルモント卿が?”

 ジークは確かに強い。
 勝ち方に拘らないからこそ負けることはないのだ。

 だが、当時既に副団長にまで上り詰めていたベルモント卿が一度も、ということには思わず驚いてしまう。

「まぁ、一緒に過ごすうちにジークが特別になってしまったせいもあるかもしれませんが」

 まるで冗談のようにそんなことを口にしたベルモント卿。

「そうやって過ごし、目的地である戦場に辿り着いたんです。案の定休戦状態ではありましたが、私たちが着いたことで戦闘がはじまる、そんな瞬間でした」
「え、まさか」
「そのまさかです。しれっとジークが剣を抜いて、リヒテンベルンの騎士と合流したんですよ」

“ジークに依頼をしたのってリヒテンベルンだったの!?”
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