愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 確かに大国グランジュが、いくら腕がたつとはいえ一傭兵に助っ人の依頼を出すことはない……が、弱小国であるリヒテンベルンならば。

「う、うわぁ、あり得るわ」
「驚きましたよ。さっきまで談笑していたのに、じゃあ今から敵同士だな! と剣を向けてきたんですから」

 ベルモント卿の説明に思わず青くなるが、豪胆なジークなら、敵と堂々と行動を共にし目的地まで案内させるくらいしそうだと思った。

「そ、それで結果はどうなったの……」
「元々戦力的にはグランジュが圧倒的ですからね。ただ、ジークには手こずらされました。しかもあいつ、手を抜いていて」
「あー、案内の駄賃、とか言いそうね」
「まさにそれです。こっちの騎士のプライドはズタボロですよ」

 とんでもない話だが、それでもやはりどこか楽しそうで。

「結局リヒテンベルン側の指揮を担っていた男が逃げ出したところでジークもアッサリと戦闘を放棄、そして戦闘が終わったタイミングで笑顔で手を振って来たんです。『また遊ぼうな!』だ、そうですよ」
「遊ぼうって、ジークってば……」
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