愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!

32.その行動の代償は

 ジークを探し始めて数十分。
 まだまだ序盤とはいえ成果はゼロ。

“当たり前、よね”

 そもそもジークは私の護衛になる前はお金で何でもする流れの傭兵だったのだ。
 ジークに依頼される内容は当然お綺麗なものばかりではなく、だからこそ『生きていればそれで勝ち』という誰よりも泥臭い戦闘スタイルが完成したのだろう。

 そしてそんなジークが、綺麗な世界だけではなく裏の世界も知っているジークが本気で姿を眩ませたならば。

「普通に探しても見つからない、わね」
「えぇ。痕跡すら見つかりませんね」

 ぽつりと呟いた言葉にベルモント卿もすぐさま同意してくれる。

「やはりどうしてジークがここにいて、そして消えたのかを考えないと厳しいですね。妃殿下、ジークを見かけた時に何か違和感などはありませんでしたか?」

 考え込むようにそう言われ、私も彼と同じように思考を巡らせた。

 相手の目的がわかれば必然的に居場所のあたりもつけられる。
 些細なことでもいい、ジークが普段と違ったところは何かなかったか。もしあったならそれはどんなことだったのか――

「…………」

“わっかんないわね”
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