愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 だが、残念ながらどれだけ思い出しても何も思い当たらなかった。

「顔を隠しているようだったから見つかりたくないんだとは思うんだけど、今欲しいのは隠れ場所だとかここに来た理由とかだものね」

 しかしジークを見かけたのはほんの一瞬のことで、それ以上の情報はない。

“そもそもジークは誰から隠れたかったのかしら”

 私だというのならば、そもそも選抜大会の会場には来ないだろう。
 グランジュの騎士だという場合も同様だ。こんな騎士だらけの場所には足を運ばないはず。


「わからないことを考えても仕方ありません。では逆に確定しているところから考えてみましょうか」

 頭を悩ませながらうんうんと唸っていると、ベルモント卿がそんな提案をした。

“逆転の、発想……”

 どこに隠れているのかも、何故ここにいるのかもわからない。 
 探す方法がない。

 そこから逆転させるとすれば。


「ジークは、私からは隠れてないはずよ」
「妃殿下?」
「そして多分グランジュの騎士からも隠れてないわ」

 思いついた方法はひとつだけ。
 だがそれは王太子妃としてきっと選ぶべきではない選択。
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