愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
“相手は六人、対して私たちは二人……ううん、足手まといを抱えたベルモント卿一人ね”

 選抜大会をすでに敗退してしまった私は残念ながら武器の帯剣はしておらず、そのことを悔やむ。
 武器ももっていない私は明らかに足手まといだった。

「何者だ?」
「グランジュの騎士だ」
「嘘だな、構えが違う」

 動揺することなくあっさりとそう口にするベルモント卿と、どこか馬鹿にしたように鼻で笑う相手。
 その余裕は、この人数差から来るのだろう。

“でも、絶対に大丈夫”

 いくら第一騎士団団長という立場の彼でも、守りながらこの人数を相手にするのは厳しい。
 それでも私はそう確信をしていた。

 だってここに敵が現れたということは。


「お姫様らしく守られてるなんて、成長しましたねぇ。セヴィーナ姫様!」

 私とベルモント卿を囲んでいた男たちを飛び越えるように屋根から飛び降り、私の後ろに着地した誰かが笑いながらそう口にする。
 相対していた男たちと同じローブを被って顔を隠していたそのフードがふわりと外されると、長いこげ茶色の髪を乱雑にひとつに束ねた髪が露になった。

「ジーク!」
「なっ!?」
 
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