愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 突然の乱入者に驚いたのは相手側だけだった。

「相変わらず無茶なさる」
「遅かったじゃない」
「これで二対六か、勝てる気しかしないな」
「いいえ、三対六よ!」

 ははっとベルモント卿が吹き出し、ジークが腰に差していた二本の剣の一本を渡してくれる。

「斬りこみにはいかないでくださいよ」
「善処するわ」

 そこからは一瞬だった。
 大胆な振りで薙ぎ倒すように走り回るジークをフォローするように美しい剣筋で確実に倒すベルモント卿。

 二人の合間を縫って突撃して来た敵と相対するつもりで私も剣を構えていたのだが、想像以上に連携が取れている二人のお陰で特にすることはなく、あっという間に六人全員が地面に倒れていた。


「リヒテンベルンの騎士だな」
「あぁ」

 鞘に剣を収めながら冷静に分析するベルモント卿を頷いて肯定するジーク。

“でも、どうしてリヒテンベルンの騎士が私を?”

 私が気に入らないグランジュの人間はまだ沢山いるだろう。
 特に貴族の中には多く、私を消して自身の娘をと狙ってる人だっているかもしれない。

 だがリヒテンベルンからすれば、私を消す理由はないはずだ。
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