愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!

33.手を取り合って

「や、やだっ、アルド、アルドっ!」
「落ち着け、俺は大丈夫だから!」
「……っ」

 流れる血に動揺しパニックになる私をそのままアルドが強く抱きしめる。

「全員を確保! 拘束し自害も出来ないよう口に何か詰めとけ」
「ハッ」
「あー、道具ないし関節と顎外すか」
「やめろ、ジーク」

 アルドの指示で駆け付けた騎士やベルモント卿、そしてしれっと怖いことを言いながらジークも従う。
 だが私はバクバクと早鐘を打つ心臓とアルドの怪我が気になり正直それどころじゃなかった。

「でも、血、血がっ」
「腕を切っただけだ」
「腕!? 利き腕だったら剣士として致命的じゃっ」
「まぁ前線で戦ってはきたが同時に王太子だ、問題ない」
「問題ないはずないでしょ!?」

 確かにいつか王座に就いたなら前線へと立ち続ける必要はないかもしれない。
 だがまだ王太子なのだ。王太子という立場なら有事の際は前線に立ち軍を導く必要がある場面だってあるだろう。

“私が油断したせいで!”

 いつだってそうだ。
 私はいつも考えが足らず、どうなるかの結果を考えるより先に行動をしてしまう。
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