愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「この程度怪我には入らん。それにセヴィーナが考えるより先に行動してしまうなら俺がその分考える。だから俺が動けずにいたらお前は今まで通り飛び出して連れ出してくれ」

 まるで諭すようにそう告げたアルドは、こほんと小さく咳払いをする。
 少し彼の頬に朱が差し、何故か私は目が離せなかった。

「お前が好きだ、セヴィーナ」
「え」
「お前には俺だけで、俺にもお前だけだ。そのままのセヴィーナが俺には何より大事だから、守る栄光を与えてくれてありがとう」
「……っ!」


 ――それは、私が最初に言った言葉。彼と初めて約束した話。


「このままの、私?」
「さっきも言ったろ。セヴィーナが考えなしな分俺が考えるって」
「ちょっと、なんだかいい言葉のニュアンスが変わってないかしら」
「そうか?」
「そうよ!」

 だが、こんな軽口が堪らなく心地いい。
 ふはっと吹き出すアルドに釣られ、私も小さく笑みを溢した。

 そのタイミングで、わざとらしいくらいの声でジークが口を開いた。

「そろそろこっちも見てくれませんかねぇ? 後始末残ってるんですけどぉ」
「あ、やっ」
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