愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「つまりジークはその依頼があるのを知って、こいつらの見張りがてら妃殿下の一番側で守ろうとしてたってことだな」
「だったらわざわざセヴィーナを危険に晒す前に倒せばよかっただろう」
「そうすると姫様に会えないんで」

“そういえばジークってベルモント卿と出会ったキッカケも道に迷っていたのよね”

 どうやら土地勘云々ではなくそもそも方向音痴だったらしい。

「別の部隊がいたらどうすんすかぁ? 姫様に危険を知らせるのは大前提でしょ」
「ちょ、ジーク、アルドを煽らないで!?」

 慌てて私も物理的に二人の間に割り込むと、後ろから腕を引かれてすぐにアルドの腕の中にスッポリと収まってしまう。
 一体何故このタイミングで抱きしめられたのかわからず混乱していると、まるで堪えきれないというようにジークが吹き出し、私の手をそっと握ったと思ったら手の甲に口付けを落とした。

「……姫様が、愛されているようで安心しました。幸せじゃないならこのまま拐おうと思っていたんですが、杞憂だったようですね」
「な! おま――」
 
 くすくすと笑いながら、ジークがバサリとフードを外す。
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