愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 そのフードを外したジークを見て、ギシリとアルドが固まった。


「お、女……?」
「ははっ。女騎士にすら嫉妬しちゃうくらいウチの姫様にぞっこんで安心しましたよ、お、う、じ、さ、ま!」
 
 ジークの言葉に完全にフリーズしてしまったアルドに思わず首を傾げる。

“私、言ってなかったのかしら?”

「確かに名前だけ聞くと男みたいですけどね。でも傭兵なんて仕事をしてると女にはそもそも仕事が来ないんで」

 どれだけ実力があっても、女というだけで仕事の依頼が減る。それが残念ながらこの世界の事実で、だからこそジークは「ジーク」と名乗っているのだと言っていた。


「それより、ジークはこの後どうするんだ?」

 当然一緒に行動したこともあるベルモント卿は最初から知っていたのか驚く様子はなく、冷静にそう尋ねる。

 依頼を潰した以上ジークはリヒテンベルンへはもう帰れないだろう。
 それどころか追手がかかるかもしれない。

「だったらもう一度私の……」

 私の騎士に、と言おうとして途中で口をつぐむ。
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