愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「私……いや、俺の側にいればいいだろう」
「ベル?」
 
 引き留めることも引き留める言葉もないと俯いた私に飛び込んできたのは、去ろうとするジークの前に跪いて手を差し出すベルモント卿だった。

「俺の妻として、グランジュにいろ。王都の真ん中ならそうそう危なくないし、襲撃があっても対応できる。無防備な睡眠時の護衛はしてやるぞ」
「なにを言って」
「俺は冗談は好かない。ずっと前から俺にはお前だけだった、どうだ?」
「どうだって……」

“戸惑ってるジークって初めて見るかも”

 豪胆で自信満々。
 そんなジークがオロオロとする姿がなんだかとても可愛く見える。

「ベルモント卿がどんな縁談も想い人がいると断っていたのは確かだ」
「ベルモント卿が団長を務める第一騎士団に私もよくいるわ」
「姫様、殿下……」

 ぽかんとしたジークは、思い切りガリガリと乱暴に自身の頭を掻く。
 そして大きなため息を吐いた。

「女らしく、ないが」
「ジークらしくはある」
「女の趣味悪いぞ」
「惚れたもんは仕方がない」
「……なら、責任を取るしかねぇか」
「あぁ。大事にする」
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