愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 それはリヒテンベルン側から抗議する理由にも攻撃を仕掛ける大義名分にもなる出来事だ。

“まさか私を殺して利用しようとするなんて”

 本当に私を家族とは思ってくれていなかったのだろう。
 血の繋がりがあっても関係ない。私は不要だった、それだけだ。

“でも、昔みたいに絶望はしないわ”

 だって血の繋がりが全てじゃないともう知っているから。

「なんだ?」

 相変わらず私室の机で何かの書類に目を落としているアルドをじっと見つめていると、私の視線に気付き顔を上げたアルドが怪訝な顔をして私を見上げる。
 
「んーん。ね、私もアルドのこと、大好きよ」
「そうか」
「照れてる?」
「それはセヴィーナだろ!」

 照れ隠しで反論するアルドに思わず私が笑うと、アルドも釣られて笑った。


「ジークとベルモント卿、結婚式しないのよね」
「俺たちも式はしていないからな。主君がしていないのに自分たちがするわけにはって言っていたな」
「絶対言い訳よねぇ」
「俺もそう思う」

 彼らの結婚は、私たちと同じく書類上であっさりと受理された。
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