愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 私の発言にどこか辟易とした顔をするミィナだったが、小さく息を吐いた彼女はわざとらしくむすっとした顔を私へと向けた。

「朝食を取りに行った時にお嬢様が騎士の訓練所へ行きたがっていることは伝えてきましたので大丈夫です。流石に昨日来たばかりのお嬢様を一人で放り出すなんてことは出来ませんし」

 場所もわからないでしょう、とやはりどこかわざとらしくやれやれと肩をすくめながらそう言うミィナ。

“素直じゃないんだから”

 そんなミィナに小さく吹き出しつつ、彼女の不器用な気遣いに感謝しながら私たちは騎士の訓練所へ向かったのだった。



 王子妃宮を裏から抜けて長い廊下を進む。
 庭園をぐるりと回り王城の方へ真っ直ぐ進んだその先が訓練所らしい。

「あら? この上ってもしかして」
「はい、王太子殿下の執務室でございます」
「こんな風に繋がってたのね!」

 昨日は正面から入ったので気付かなかったが、王太子妃宮の先の廊下を進んだ左側に彼の執務室があったようだ。
 訓練している騎士たちの声が近くなってきたことからも、アルド殿下の執務室の窓から訓練の様子を確認出来るようになっているのだろう。
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