愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「まさか勝ち残るなんて思わなかったわ」
「ベルモント卿も驚いていたしな」

 私に不満を持っている騎士は途中で手を抜く。
 だから勝ち残るとは正直思っていなかったのだが、私に負けたのが余程悔しかったからかしっかり実力を上げて今回の選抜大会に優勝したのだ。

「まさか護衛任務で手を抜いたりとか……」
「ないと思うわよ。そもそもそこで手を抜くなら選抜大会で手を抜いてるわ」
「それもそうか」

 護衛の失敗という責任を取って処刑まっしぐらという命のかかった場面で手を抜くなんてリスクは流石に犯さないだろう。
 もちろんあの生意気騎士が今回の事件のように実はリヒテンベルンから送り込まれていたというのであればあり得なくはないが、彼は生粋のグランジュ人だったしそもそも私がグランジュへ輿入れすると決まる前から騎士見習いとして働いていたらしく、その可能性は限りなく低い。

「それに、なんだかんだ毎日真剣に鍛錬をしていたもの」
「何故毎日鍛錬していたと王太子妃であるセヴィーナが知っているのかは気付かなかったことにする」
「ま、それに私の元護衛騎士としてジークも特別に訓練をつけるって言っていたし大丈夫よ」
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