愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「途端にあいつが不憫に思えてきたな……」
「なんでよ!」

 私の抗議を完全に無視したアルドが、机に広げていた書類を片付け始める。

「お仕事終わった?」
「あぁ、寝るか」
「うん」

 すっかりアルドと一緒に寝るのが当たり前になっていたせいで、ここ十日の一人寝がなんだか寂しく感じていた私は嬉しくなって彼のベッドへと飛び込む。
 そんな私を見たアルドは、「子供か」なんて言いながら笑っていた。


“まだ考えなくちゃいけないことは多いけれど”

 何故そうまでしてリヒテンベルンはグランジュに戦争を仕掛けたいのか。
 そもそも勝ち目すらないのに、どんなメリットがあるというのだろう。

「もしかしたら私が知らない何かが……」
「セヴィーナ? どうかしたか?」
「ううん、なんでもない!」

 一人で考えてもきっと答えの出ないこの問題は、幸せな夜を過ごしてからでも遅くはない。
 そう考え直した私は、遅れてベッドに入って来たアルドにぎゅうっと抱き着いた。


「私と向き合ってくれてありがとう」
「そういう約束だったしな」
「売り言葉に買い言葉だったくせに」
「お互い様だろ」
「あははっ」
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