愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 私が緊張でガチガチになっていることを察して来てくれたのだろう。おそらくさっきの軽口も私の緊張をほぐすため。

「ならいいけど!」
「じゃあ行くか」

 私はそんなアルドの優しさに甘え、彼の差し出してくれた腕に自身の腕を絡め頷いたのだった。
 

「いってらっしゃいませ」
「行ってくるわね、ミィナ」
「騎士様も」
「あ、あぁ、ありがとうございます」

 部屋を出た私たちに恭しくミィナが頭を下げる。
 ドアの前で待機していたのは、先日の選抜大会で優勝し私の専属護衛騎士となった生意気な新人騎士……もとい、ランドル・ラッカーだった。

“ミィナには従順というか、いつも顔を赤くしているのよね”

 以前の私なら間違いなくミィナに怒っているのだと判断していたが、モニカの一件で学んだのだ。
 顔を赤くして目を合わせないのはそれつまり好意の現れ!

“まぁミィナは猫みたいで可愛いもの、当たり前よね”

 もしかしたら喧嘩を売られたあの初対面の時も、本当はミィナを振り回す私を懲らしめたいだとかミィナにいいところを見せたいということだったのかもしれない。
 その推察に我ながら感心していた時だった。
 
< 285 / 340 >

この作品をシェア

pagetop