愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「リヒテンベルンが戦争を仕掛けても勝ち目がないのは明白です。それなのにわざわざ戦争を仕掛けようとするということは何かしらの勝機を見出しているからでしょう」

 ダレアが冷静にそう分析する。
 その考えに私も頷いた。

“リヒテンベルンの軍事力くらいは私も知っているもの”

 だからこそ、総力戦では絶対に勝てないと断言できる。

 
「……リヒテンベルンをそそのかしている国がある」
「やはりそうなるか」

 ジークがそう口を開くと、すかさずアルドが肯定した。

「ジーク、どこの国かはわかっているのか?」
「当たり前だろ、姫様の暗殺依頼を受けたの私だからね」

 まるで冗談を口にするように軽く笑い飛ばしたジークは、その笑顔をサッと消して真顔になり、机の上に広げられていたある国を指さす。
 その国はグランジュから見ればリヒテンベルンの後ろ、まるでリヒテンベルンを挟むようにして大国グランジュと相対しているもうひとつの大国。

「メイベルク王国だ」

 ジークの言葉を聞きその場にいた全員が固まる。

 メイベルク王国は海に隣接していることで活気がある。
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