愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 ただ少し沖に出れば潮の流れが突然速く複雑になる為残念ながら貿易港としては機能していなかった。

“もし貿易港としても機能していれば、この大陸で一番大きく影響力を持つ国はメイベルク王国だったはずよ”

 しかし実際はそうはならず、その結果この大陸で最も大きく最も影響力のある国はここグランジュだった。
 グランジュの面している鉱山地域で鉄が豊富に取れることもそうなった所以だろう。

 鉄がなければ武器も防具も作れない。
 グランジュがこれだけの軍事力を誇る理由もこの鉱山があるからで、そして海に面したメイベルク王国は特にこのグランジュからの輸入でしか鉄を賄えないのだ。
 
 もちろんメイベルク王国が望むだけの鉄を輸出するわけではないが、それでもそのこともありメイベルク王国とグランジュは長年とても良い関係を築いていたはず。

 
 だが、全員が国名を聞いて固まった理由は相手が長年の友好国だったからではない。

「そ、その国には今、お父様とお母様がいらっしゃるわっ」


 現在アルドが両陛下の代わりに忙しい毎日を送っているのも、表向きは王太子妃の私がまだ挨拶すらしていないのも。
< 289 / 340 >

この作品をシェア

pagetop