愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 繋がっているとは言っても、執務室へ入るには結局は昨日のように正面へと回り込まわなければいけないのだが、それでも見上げた先にアルド殿下がいると思うと気合が入る。

“訓練で活躍しているところを見せれば話すキッカケになるかもしれないし”

 恋する宣言をしたものの、そもそも会えなくては恋なんて生まれようがないのだ。
 だがここでいいところを見せられれば、感動しコロッと私の元へ転がり落ちてくれるかもしれない。

「味方を得るだけじゃなく恋も芽生えるチャンスじゃない」
「お嬢様?」
「あ、ごめんなさい。今行くわ!」

 私はゴクリと唾を呑んだことがバレないようそしらぬフリをしながら訓練所の入り口前へと立った。
 

「こんにちは」
「! 妃殿下!?」

“妃殿下!!”

 そこで訓練していたのはまさに昨日私を国境まで迎えに来てくれていた騎士たちで、だから私の顔を見てすぐに誰だかわかったのだろう。
 
 呼ばれ慣れない、というよりまさか呼ばれるとは思わなかったその呼び方に胸が高鳴る。
 また、昨日迎えに来てくれた騎士以外の騎士たちもその呼び方で私が誰だかを察したのか一斉にざわついた。

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