愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 流石に共倒れになるなんて思ってはいないだろうが、そっちで気を引いている間に第三勢力として隙を突きグランジュを攻撃出来る。
 リヒテンベルンを使い捨てにするつもりだと言われれば理解は出来た。


 メイベルク王国が見ているのはリヒテンベルンではなくグランジュだ。
 少しでも戦力を削ぎ、全面戦争を仕掛けグランジュをおとせば名実ともにメイベルク王国がこの大陸で最も大きく最も影響力のある国になる。

 両陛下があちらの手の内にある以上、こちらは全力を出せない。
 しかもそこで嫌がらせのようにリヒテンベルンとの戦争まで起こってしまえば、より侵略は楽になるだろう。

 「でも、それは私が死んでいた場合よ。実際に怪我したのはアルドだわ」

 そうなると糾弾する理由があるのも戦争を仕掛けることが出来るのもグランジュ側だ。
 もちろんどちらに転んでもメイベルク王国は痛くも痒くもないのだが。

「でしたら、大変遺憾ではありますが殿下の怪我の件はこのまま触れない方がいいかと」
「あぁ。俺もベルモント卿の意見に賛成だ。わざわざ相手の都合に合わせてやる必要もないだろう」
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