愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 アルドの言葉にその場にいた私以外の全員が頷き賛成する。
 
「追及するのは王様たちが帰って来てからでもいいもんなぁ」
「表向きは友好国ですからね。いつまでも両陛下を足止めは出来ないはずです」

 確かに、普通に考えればその通り……なのだが。
 
 ――本当にそれでいいのだろうか。
 私の中で小さな疑問が芽生える。

 
“メイベルク王国からすればリヒテンベルンとグランジュが戦争をしてくれる方が都合がいいのよね”

 現状は貴賓としてもてなされている両陛下。
 荒事を起こさず待っていれば、本当に二人は無事に帰ってくるのだろうか?

 グランジュが今回の件の責任を問わなければ確かに表向き攻撃を仕掛ける理由がなく、そして戦争が起こらなければ『嫁いだ娘を殺された友好国のリヒテンベルンからの依頼』という建前の元グランジュの隙を突き攻め入ることは出来ない。

 
 でももしリヒテンベルンをそそのかした理由がワンチャンを狙うような運任せのものではなく、時間稼ぎだったのなら。
 密かにずっとグランジュを狙い、その準備の時間を作るための使い捨ての駒だとしたら。

“もしそうなら、両陛下の帰還はないわ”
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