愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 準備が整い、総力戦を仕掛けてくるのだとしたら『友好国だから』という建前を守る必要も、両陛下を生かしておく理由もないのだ。
 
 
「いえ、戦争を仕掛けましょう」

 私以外の全員が賛成した内容と正反対の言葉をポツリと口にした私に全員がぎょっとする。

“友好国の体面を保っているうちに何か仕掛けないと手遅れになるわ”

 根拠がある訳ではなかった。
 ただの勘。そんな理由で戦争なんて仕掛けていい訳は絶対にないけれど。

「大国グランジュの騎士たちならば、被害を出さずに時間稼ぎをするくらい可能なはずよ」
「どういうことだ?」

 私のその提案にアルドが怪訝な顔をする。
 だが即断するのではなくちゃんと話を聞いてくれるその姿勢に安堵した。

「リヒテンベルンとの戦争が最終確認の時間になっている可能性があるわ」
「なら尚更その準備期間を与えるのではなく、一度諦めさせて状況をリセットすればいいのではなくて?」
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