愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 そんな二人のやり取りに、私は何故か少しだけ泣きそうになった。

“やっと見つけたここが、私の居場所だわ”

「必ずアルドにいい結果をプレゼントするから、心配せずに待っていてね」

 その気持ちを隠すように一際明るくそう言うと、静かにアルドが首を振る。

「皆が戦っている中俺だけが待つことはしない。ベルモント卿、俺の戦場もリヒテンベルンとの戦場だ」
「なっ!」
「セヴィーナは知らないかもしれないが、俺だってそれなりに強いんだぞ? お前が無事に戻ってきたなら手合わせしてもいい」

 まるで楽しい約束をするかのようにそう微笑み提案する。
 だがその笑顔の奥にアルドの覚悟が見えたから。

「……えぇ、ボコボコにしてあげるわ」
「言ったな?」

 はは、と私たちは声を出して笑い、そしてそれぞれの戦場へと向かうこととなったのだった。
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