愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
“王城の守りを薄くしたい人が接触してくる”

 そうお義姉様は推測していた。
 だがそれと同じくらいあり得るのが王女の暗殺だ。
 そしてその混乱に乗じたメイベルク王国からの侵略。

「不安ですか?」

 私の表情が固いことに気付いたクリスが心配そうに顔を覗く。
 そんな彼に甘えるように、私はそっとクリスの肩に額をつけた。

“暗殺を狙われているとは限らないわ”

 王城を混乱させても王太子が戻れば持ち直す可能性が高い。
 ただの王女が暗殺されたとして、場内の警備が整っていれば王太子が王城に戻るまで耐えるかもしれない。

 王女を殺し混乱に乗じるか。
 王女を唆し王城の警備を減らして侵略しやすくするか。

 一番警戒すべきは自身の命だが、優位に立っているメイベルク王国が選ぶなら後者の可能性が高いのだから。

「大丈夫よ」

 短くそう答え、預けていた頭を上げて扉を見る。
 この扉の向こうが私の戦場だ。

「クリスがいるもの」
「はい、どこまでも必ずお供いたします」

 視線を合わせ、そう口にして。
 私たちは扉の先へと足を踏み入れたのだった。


 ◇◇◇


「モニカたちは今頃夜会か」
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