愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「心配ですか?」

 ぽつりと溢した一人言をベルモント卿が拾う。
 
「いや、クリストフが側にいる。それにダレアも置いてきたからな」

 クリストフなら必ずモニカを守るだろうし、ダレアならば必ず裏の裏の本音まで読み解いてくれる。

 そう信じているからこそ、それ以上考えるのを止めた。
 俺が今考えなくてはならないのは、俺の戦場のことなのだ。

 
「敵軍は1000ないぐらい、だな」

 対してこちらは300程度。
 表向きは先日の怪我の件での「抗議」のため、これ以上騎士を連れて行くのはあまりにも怪しかった。

 約三倍の人数差。

「たったこの程度の数の有利で手こずると思われるだなんて心外だな」
「その通りですね、一人が三人斬れば終わる話です」

 数の暴力という考えがあるのはわかるが、母数の数が違えば練度が違う。
 寄せ集めた1000人と精鋭の300人ならば圧倒的に優位なのはこちら側だ。

“そもそもその事実に気付かず余裕ぶっているところを見ると本当にレベルが低いな”

 本気を出せば半日で勝てるだろう。
 だが、それではダメなのだ。

 
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